2025-03-07

《インタビュー》【MIDORIKAWARYOの考えるものづくりとは】

こんにちは。

いかがお過ごしでしょうか。

愛知県岡崎市にてセレクトショップ

「abundantism(アバン)」をしております、樋口と申します。

【MIDORIKAWARYO 受注会開催】

これまでもおすすめをしてきました、

MIDORIKAWARYOのシューズ。

昨年から何度も打ち合わせをしまして

2025年3月22日(土)〜4月8日(火)

受注会を開催することが決まりました!(拍手~)

何度も打ち合わせをしてきたのは

理由がありまして、そこを今回は深掘りしてお話しさせて頂こうと思います。

というのも、受注会を開催する というのは

やろうと思えばすぐにできました。

が、ただ受注会をするだけでは意味がない。

何のためにこういったイベントをするのか。

MIDORIKAWARYOのシューズの種類の中からなぜこのモデルを用意したのか。

ちゃんと提案したい理由があってやんないと、面白くない、と考えていたからです。

そこで僕が最近考えているのは

ブランド(作り手)とお客様の距離感です。

デザイナーさんが考え、生産されたモノが、各店舗に配送されて

全国一斉に発売される。

モノだけが一人歩きするようなアパレルの流れをもう少し踏み込んで、作り手とお客様の距離感というか、どんなことを考えてものづくりをしているのかを伝えたいな、と思い企画しました。

(分業制のものづくりは伝わりにくいんですよね。。)

ブランドから届いたものをただ横流しにするだけではなく、アバンというお店のフィルターを通すことで価値が上がるような取り組みをしたいといつも考えています。

そこで今回は

MIDORIKAWARYOのデザイナーである

緑川さんにインタビュー企画を実施しました。

ここでは全てを曝け出すようなインタビュー記事ではなく、MIDORIKAWARYOという靴の背景を垣間見て、こちら側(買い手)が思考するような材料になればと思っています。

個人的にも裏側全部見せます!的な

YouTubeの飲食店の厨房に入る系の動画は

見たくないところも見えすぎてしまって

逆に幻滅するのであまり見ないようにしています。笑

そんなスタンスで書いていきます。

ぜひ長くなりますが覚悟してお読みください!笑

【デザイナー緑川さんと靴との出会い方】

樋口「お久しぶりです~差し入れです(ジャスミンティー)」

緑川さん(下記、緑川と省略)「お久しぶりです~コーヒーもあります」

水も出てきてたくさんの飲み物がありふれるところからスタートしました。笑

樋口「緑川さんはそもそもなんで靴作りをしようって思ったんですか?」

緑川「学生時代は就職難の時期だったから選択肢がなくて、だったら普通に就職するよりは、手に職をつけた方がいいか・・という考えに至りました。」

緑川さんは元々ものすごく靴に興味があったわけではなかったそうです。

教育系の大学だったそうですがそっちの道は向いてないと悟り

じゃあゼミ(テーマ研究)に入るか!となるんですが

第一から第六までのゼミがあり

第一から第五までのゼミに全て落ちたそう。

最後に残っていた一番不人気の第六のゼミに

『ものづくり』があり

とりあえずそれを選んで、仕事探しとして靴作りに出会ったそうです。

そこで靴作りを選んだ理由は?

緑川「んーなんか昔から靴は好きだったんだよな〜構造というか、そういうのが。」

意外な出会い方でした。

100歩譲っていきなり靴じゃないにしても、ゼミに落ちたからたまたま靴に辿り着いたという出会い方。

人の選択肢の広げ方、出会い方に正解はありません。

樋口「たくさんものづくりがある中で、陶芸とかそっちの選択肢はなかったんですかね?」

緑川「んー、やっぱり実用性かな。芸術をやりたいというのはなくて、そもそも仕事探しだったから。

そうなると芸術はリアリティがない。

まずは仕事を探すっていう入り口だからちゃんと実用的(必要とされるもの)な靴だったんですよね。」

緑川さんの中では、今後の仕事 をどうするか。

それが一番重要だったそうです。

だから私的な理由とは切り離して考えられたのですかね。

僕は人が何をきっかけに選択肢を発見し

その道に進むのか。

どういう影響が人間の核に触れるのか。

そんなところを別事業で運営しているぎゃざ(造形教室)を通して研究してこどもたちの環境づくりをしている部分があるので、インタビューしていても興味深かったです。

これはこどもたちにも伝えてみたい、、!

その後は中小規模の靴のメーカーやブランドに入り

1から10の靴づくり

営業も全て経験したそうです。

(営業に関しては、注文したくないだろうなぁと思いながらこなしていたそうです笑 こういう部分は緑川さんらしいなって思います。笑  絶対営業向きじゃない。笑)

その靴メーカーで働きながら

「もっとこうした方がいいのになぁ」

「自分ならこういう靴作りたいな」

という構想が出てきて

自分でオリジナルの靴も作りながら

働いている時期があったそうです。

自分の靴作りをしているうちにだんだんと

自分が作りたいものなってなんなんだろうか

と自問自答をするようになっていったそうです。

【作りたい靴ってなんなのか】

そこで出して頂いたのがこの本。

見た事ない、百靴事典(ひゃっかじてん)。

緑川「ここに載ってない名前のない靴を作りたいんですよ

誰も作ったことのない、完全なるオリジナルの靴を作りたい。

それが緑川さんが辿り着いた今のモノづくりのスタイルだそうです。

このインタビューの中でも何度も出てくる考え方で、僕自身も話を聞きながら

「だから僕は緑川さんの靴が好きなのか・・・!」

腑に落ちたお話でした。

【革で判断されたくない】

実はMIDORIKAWARYOに使われているレザーは

公言されてはいませんが、

ガラスレザーは関西のタンナーのレザーを使用し

スムースレザーはP.G INDUSTRIA CONCIARIAといつタンナーとLo Stivaleというふたつのタンナーで使い分けています。

レザー界隈では、名のあるレザーです。

ただ、緑川さんとしては、あくまでも靴の作りを見て魅力に気付いて欲しいのだそうです。

革靴ってなると大体どこのレザーだとかそういう名のあるもので判断する人がいるから、あえて言いたくないのだそう。

それでも僕が緑川さんにお伝えしたのは

樋口「仮にレザーのメーカーを公表したとしても、緑川さんのこの靴をレザーだけで判断するのは逆に難しいです。それくらい構造に魅力があります。だからMIDORIKAWARYOの靴の魅力やこだわりの一つとして、この記事で書いてみてはいかがでしょう。」

ということで今回公表させていただきました。

興味のある人は調べてみて下さいね。

【自分にしかできないこと】

僕のセレクトの基準がわかったところで、自分の状況に置き換えてみると

これまでアパレルのショップ、百貨店での勤務を経て独立を決意するわけですが、

ただアパレルだけやってる人間なんて

面白くない。

会いたくなる販売員になるには

アパレルとは違う引き出しを持つべきだ。

と、考え『こども造形教室 岡崎ぎゃざ』を立ち上げることになります。

アパレル業界で、ショップと造形教室をやってるのはきっと僕だけだと思います。

そうやって僕なりに唯一無二なスタイルを探してきたので、このお話の中で、なぜ僕がMIDORIKAWA RYOの靴を皆様に勧めたいのか、明確になりました。

そして、この基準が僕が取り扱うべきブランドさんへの共通点だということも再認識できました。

【緑川さんへ一問一答!】

僕から緑川さんへ

お聞きしたいことをたくさん聞きました。

Q1. 幼少期のあそびは?

緑川「ずっと外でしたね。ゲームもしなかったですし。」

樋口「プラモとかものづくりもしなかったですか?」

緑川「プラモとかものづくりもしなかったですね。なんなら友達に作ってもらうくらい。笑」

Q2.育てられ方は?

緑川「好きなことをやらせてもらった感じですかね。」

Q3.なぜ分業制じゃなく、一貫生産なんですか?

緑川「ブランドはじめる前までは誰かにお願いして靴を作ってもらう想定だったんですよ。

なんならそれがセオリーと思ってたくらい。でも実際やってみると

自分が描いた設計図を理解できるのは自分しかいないという状況になっちゃった。笑

オリジナルの作り方だから僕が作るしかないっていうか、、、笑」

Q4.好きなことと嫌いなことの感情

緑川「極端にありますね。好きなことより嫌いなことの方が多いですね。

好きなことはとことん追求する。嫌いなことは全く手をつけない。食わず嫌いなのもよくないとは思ってるんですけどね。笑」

Q5.流行り廃りの話

(話の中で、オークリーが流行ってるよねという話題になり)

緑川「今は急にチヤホヤされてるけど、そもそもオークリーはずっとそこにいたよって思うんすよ笑」

緑川さんの中で流行り廃りとかそれに左右されることはなく、自分は自分。

好きなものが好き。というスタンスなんだそうです。

緑川さんが履いてたこのNIKEのスウェットパンツ。

これもすっごく気に入ってて高校生の時から履いてるそうです。

前述の通り、好きなものはとことん好きというのがわかります。

Q6.ちなみにその座り方がめっちゃ僕好きなんですけど、それは・・?笑

緑川さんはじめて会った時からずっとこの座り方なんですよ。笑

僕は結構この座り方が高校生くらいの時から好きで、なんか足長い人の特権だし、

なんかその人の生活感が出るというか

この座り方ができる人って

足が細くて、長くて、グレてそうで

なんですかね、なんかそれがパンクな匂いがするんですよ。

そんな一面が見えるとすごくかっけぇなぁって高校生くらいの時は思ってて

久しぶりに見つけたのでツッコんでしまいました。笑

緑川「これはクセなんですよ。笑

なんか足の甲が何かにくっついてないと落ち着かないんです。

今まではむしろ気持ち悪いからやめなさいって言われてきました。笑」

僕は好きです。

Q7.靴とは?

緑川「履くもの。入れ物?そんなくらいですよ」

【ぎゃざの子供たちと生中継!】

当日、東京↔岡崎ぎゃざのこどもたちと生中継をして、

デザイナー緑川さんへたくさん質問をしてみました!

かなり長くなるので、これはまた別の記事に書きますね!

岡崎ぎゃざ側ではこんな様子(笑)

ちょうどこの日は3人のゲストの方が見学に来ていて大盛り上がりだったそう。

子供たちの質問は鋭くてこわい!そんな心境だったそう。

一方こどもたちも、あぁ~キンチョウした~~と良い時間を過ごしたようです^^

【お客様からの質問】

せっかくの機会なので

僕からの質問だけではなく

実際にお客様からの質問も募ってみました。

皆さまありがとうございます!!

こんな機会じゃないとデザイナーとの交流はないですからね!

緑川「寝てる時以外ずっと。丸丸一日靴のことを考えてないことはないかな。

アトリエから帰ってからもずっと触ったり、履いてみたりしてる。

でもただただ触ってるだけ。なんも考えてないよ笑」

緑川「んーーーちょっと時間下さい。

んーー、僕はデザインの前に使いやすさとか

簡単に履けるとか、機能(裏)から入って

それをデザイン(表)と結びつけながら裏表を考えています。

まぁ考えるというより、何度も作って試しての繰り返しで生まれる感じです。

緑川「さっきの話もあるけど単純に靴が好きだったかな。

靴の複雑な構造が好き。あとは絶対必要不可欠なものっていうことかな。」

スキーを長年やってきた緑川さん

樋口「スキーの靴も好きですか?」

緑川「スキーの靴は別に好きじゃないかな。笑

ただ硬い靴って感じ。」

スキーの靴もだいぶ複雑な印象ですが、違うそうです笑 スキーだけに使うからですかね。

スポーツという認識が参考するからか、そこと靴はかけ離すんですかね。(僕の考察)

緑川「まぁ今までこの名前で生きてきたし。

小さい頃から緑川りょうくん緑川りょうさんって呼ばれてきたから、今までと同じように名前をつけましたね。

RYO MIDORIKAWAって名前を逆にするのって向こうの人(海外)に合わせてるじゃないですか。

こっちが向こうに合わせたくないというか。笑

例えば、海外の人に日本語教える時に

イントネーションが海外の人向けで日本語話すことあるけど、なんで合わせんだよ!って思うの笑

スーシーとかコンニチハとか

寿司は寿司だし

こんにちは は こんにちは だろ!って思うんですよ笑

あくまで名前であるから

今まで通り等身大でいたい。」

こんな質問大丈夫かな、、笑

とか思ってましたが、この質問が一番緑川さんの本質に迫っているというか、スタンスが見えてきますよね。

いい質問でした!

緑川「基本自分の靴ですね。他の靴はほとんど履かない。

っていうのも、靴ってすぐ履いて履き心地がわかるものじゃないから、長い時間かけて履き続けて、あーーここ直したいなとか、ここをこうしたらいいなとか、見えてくるものがある。

だからなるべくその気付きを自分の靴に向けたい。

まぁでも靴は好きだから、あれば靴は見ますけどね。

ただそれを見たからって、自分の靴にどうこうなるわけじゃないから、、、」

独自の靴作りの背景に、他の靴を見て自分の靴を作るという行為はないんでしょうね。

緑川「それもやっぱりさっきの話じゃないけど、名前のないものを作りたいから・・・

何年代の〇〇とかそういうのが乗っかるのはほんと嫌なんですよね。

オリジナルばっかです。

オリジナル1000本ノック。

ただもし仮にカルチャーが入っているとしたらそれは僕の生まれ育った場所だと思います。」

緑川「機能とデザインですかね。

僕の中でデザインって機能がないと意味がないというか。

意味もないのに付いてるものって、デザインというか”飾り” ? になってしまうと思ってるんです。

だからちゃんと意味のあるデザインにすることは考えてますよね。」

樋口「ちょっと聞いてもいいですか。笑

緑川さんって足は(26.0cm)なのに大きい方がかっこいいからって(28.0cm)履いてるじゃないですか。

これだけ機能を求めているのに大きいサイズを履いてて

かつ、最近だとMIDORIKAWARYOの靴は

サイズ展開っていう概念をなくして、

洋服のようなXS〜XLというサイズ表記に変えたじゃないですか。

機能的なことをこれだけ追求したのに、好きなサイズ履いたらいいよね、見た目がかっこいいサイズでいいじゃんって、なんかこう矛盾しませんか?笑」

緑川「いや〜〜〜笑 両方いるんすよね。笑

サイズをXSとかLとかに変えたのも

押し付けたくなかったからなんですよ。

26.5㎝の人はそれ履かなきゃいけない みたいな操作をしたくない。

自分の気持ちいいサイズ感てあるじゃないですが

それはこっちが操作するんじゃなくて、履く人が操作すべきだから、、、だから無くしました。」

僕はだいぶイジワルな質問をしましたが

緑川さんの考えは一貫してると思うんですよ。

ただ一貫する中に矛盾が生じるのは必ずあって、

例えばアパレル業界だって、地球に優しい素材とか言ってものづくりするし

そもそも地球に優しくしたいなら物作んなよって話だけど、そういうことじゃない。

緑川さんの中ではサイズ選びも機能だと思うんです。

選ぶ側の楽しめる機能。

それは靴やブランド側が決めることじゃない。

だからサイズを無くした。

僕はこれすごくいいと思っていて

特にMIDORIKAWARYOの靴は、0.5㎝とかの差がほとんどなくて

しかも、このブランドの思想を少し見えるというのがちゃんと機能になっている。

お客様に迎合するんじゃなくて

ブランドやものづくりする側、売り手側に

提案があるものは必ずこれからも残ると思っています。

緑川さんにはそれが感じられます。

いい質問でした!

緑川「一番好きなのはわかんないけど

乾いた感じが好き

ちゃんとエンタメもあって

緊張感もあって、トーンが静かで

あとヒューマンドラマ系というか、人間の生々しい感じは好きです。

靴には全然影響ないけど。笑

ここでサブカルっぽい映画は言いたくないですね。笑」

話の中では、具体的な作品名、監督名も出ましたが、緑川さんの思考が出過ぎるので控えておきます。

ぜひ想像してみて下さい。

緑川「まぁ、それは、ずっと不安ですよ笑

そういうもんじゃないですかね笑

はじめる前は不安なんてなかったですけど

今の方が、アイデア浮かばないなぁとか

そう思うことはたくさんありますね。」

だからこそのずっと靴のこと考えるっていう状態なんですかね。

何かを自分ではじめたとか生み出している立場の人で不安じゃない人とか考えてない人はいないかなと思います。

僕自身もずぅーーーーーっとアバンとぎゃざのこと考えますし、お金のことも考えてます。

それと不安ていう状態がなくなったらもうアウトです。笑 多分終わります。笑

人間 不安とか危機感とかそういうのがないと動かないと思うんです。

それが全てじゃないけど、動機としてとても大事。精神的にも大切な要素。

多分それがないことって仕事として成り立ってないことなんじゃないかな。

それで飯食ってる以上、付きものです。

僕のおじいちゃんが78歳で理容師の経営者を引退した時のあの「ホッ」とした顔は忘れられません。

ずっと不安もあったんでしょう。

すいません僕が最後でしゃばりました。笑

以上がお客様からの質問でした!

たくさんのご質問ありがとうございます!

僕だけでは引き出せなかった緑川さんの魅力がたくさん出てきました。

【受注会のラインナップ】

今回のインタビューを踏まえて

緑川さんオリジナルの手法であるCHAINシリーズを軸にラインナップを決めました。

” CHAIN HOVER “

” CHAIN SQUARE “
” WAVE “

ブーツやサンダルも、、、という話し合いもありましたが、改良の余地があるということで、また今後、ブーツ企画・サンダル企画を開催しようという感じです。

そしてこのラインナップの中に

新作のSPLITを加えて4種類のモデルを用意して

お待ちしております!

” SPLIT “

▶︎日程:3/22(土) – 4/8(月) 11:00-18:00(金曜13:00オープン)火水木休み

▶︎場所: abundantism内

▶︎住所: 愛知県岡崎市籠田町13

▶︎支払い方法:内金11,000円 or 全額支払い

*遠方の方は、DMからのご注文も可能です。サイズ等のご相談乗ります。

最後までご覧頂きありがとうございます!

インタビューは今までやったことのない取り組みでした。お楽しみいただけましたでしょうか。

以前からMIDORIKAWARYOを気になっていた、というお話をたくさん店頭で聞くので、そんな方は必ずこの機会にお越し下さい!

それでは!

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